8/18 ヒグラシの声が聞こえない

hiyori

ふぅ と一息。




「カナカナカナカナ」
「しゃんしゃんしゃんしゃん」






——あの夏の夕暮れの合唱が聞こえない。






お盆も過ぎて、まだまだ暑さが残る夕方。






用事の帰り道でふと、当たり前にあるはずのものが無いのに気づく。






あれ?






この時期、この時間——






ひぐらしの声が響いていたはずなのに。






耳を澄ましても、どこからも聞こえてこない。






都会ではない。






ここでは、夏の夕方はひぐらしの大合唱が当たり前だった。






それが、今年は静かすぎる。






夏の終わりを告げる声がなく、





ただ暑さだけが残る夕方。






季節の調べが 一音だけ欠けたような。






胸の奥が、少しだけ悲しくなる。






香典返しの和紙礼状を作る際、





お客様からオリジナル文のメッセージカードを頼まれることがある。






文字入れなど事務的に進めなければならないのだろうが、





そこに込められた言葉に、ついホロっとしてしまう。






当たり前のようにあるものが、目の前からなくなるのは寂しく、つらい。






この世界では、何ひとつ始まりのあるもので終わりがないものはないという。






終わりがあるから始まりがある——そう言う人もいる。






ただ、願わくば心の中だけはひぐらしの鳴き声のように、大事なものを終わりなく静かに響かせて欲しい。






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ふぅ とひと息。
今日は陽ざしの中で
和紙がきれいに透けて見えました。